桐青★島準

□唇から伝わる貴方の温度。
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「準太、爪割ったのか?」


部活の終わった帰り道、慎吾の見つめる先には少し血の滲んだ準太の指先。


準太の右手を柔らかく掴み、まじまじと見つめる。



「…練習中、ちょっと引っ掛かっちゃって…。」



気を付けてるつもりなんスけどね、と準太は苦笑いした。



「気をつけろよ?ちょっとしたことでも、投げれなくなったらつまんねーだろ?」


「はい。すいません。」



そしてその指先を、ちゅ、と口に含んだ。







「え…慎吾さん?」



慎吾の口に、鉄の味がひろがる。

マメが潰れてタコになってる指先。

それでも準太の指は長く細く綺麗だと、慎吾は思った。



「痛てえ?しみる?」


「……大丈夫です…。」


「ホントに、気をつけろよ?」


「はい。すいません。」


「怒ってんじゃねーから。あやまんな。」


「…はい、慎吾さん。」



労るように。

癒すように。

慎吾は優しく、準太の指を舐めた。






「…っ…慎吾、さん??」


労るように優しかった舌先に、何だか別の意図が見え隠れし始めた。

ねっとりと絡み付き、準太の指を濡らす。

指先だけでなく付け根あたりまで、慎吾の舌が這う。


「…慎、吾さん…も、いいです。大丈夫だから…。」


「…何、準太、気持ちいいの?」


「や…違っ…」



クスッと笑う慎吾。
だけどその指を、放そうとはしない。

夜で人気がないとはいえ、往来でこんな風にされることは恥ずかしく、準太はかぶりを振った。



だけど気持ちよくて。


触れられているのは指だけなのに、腰に震えがくる。







「ン…っ…」



指の付け根の薄いところを強く吸われて、準太の口から思わず声が漏れる。

その甘い響きに、うっとりと慎吾は目を細めた。


プライドが高くて、負けず嫌いで、マウンドの上では飄々としている準太が、自分だけに見せる艶めいた表情。


慎吾はなおも指を放そうとはしない。


あいた左手で準太の腰を引き寄せると、見せ付けるように準太の眼前で指先を吸った。






「ア…しん、ごさん…やぁ……っ」



ぶるっと準太が体を震わせる。



「あ…」


「…勃っちゃったね。感じてんだ?」


「だって…あんなにされたら…っ」



顔をあからめて、少し潤んだ瞳でうったえる準太はとても綺麗で、可愛くて。


こんなに誰かに夢中になったことはなかった。


誰にも渡さない。
絶対に放さない。


慎吾は準太の耳元で優しく囁く。



「…どうする?」



赤かった準太の顔が、更に赤くなっていく。

準太は慎吾の肩に顔を埋め、そして蚊の鳴くような声で、だけどはっきりと言った。



「……慎吾さんがこんなにしたんだから…最後まで慎吾さんが責任とって下さい…。」



その言葉に、慎吾は幸せそうに笑う。



「大好きだよ、準太。」


「…オレも、大好きです…。」



そんな二人を、月明かりが照らしていた。






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