桐青★島準
□その不安は君だけのものじゃなく。
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「もしオレが、この世からいなくなったらどうする?」
唐突に何を言い出すのだろうこの人は。
まだ昼メシを食い終わらないオレの横で、すでに空になった弁当箱を包み直してごろりと転がる慎吾さん。
放っておくと胡座をかいてるオレの腿に頭を乗っけてくる。
「慎吾さん、オレまだ食ってる途中なんスけど。」
「なあ、オレがいなくなったらどうする?準太。」
なおも聞いてくる慎吾さん。
答えるまで頭を退けてくれそうにない。仕方ないなと思いつつ一旦食いかけの弁当と箸を置く。
「…いなくなるんスか?」
「もしも、の話だよ。」
頭をオレの膝に乗せたままで、オレの顔を仰ぎ見る。
満腹で苦しいのか腹をさすりながら、慎吾さんは続けた。
「もしオレが今日部活の帰り交通事故とかに遇って、一生目ぇ覚まさなかったり最悪この世からいなくなったとしたら、どうする?準太。」
「…そんなの……」
考えられない。
考えたくもない。
平凡に、だけどそれなりに充実した穏やかな日々に、するりと入り込んできて、貴方を好きな気持ちを自覚させられた。
今まで持ち合わせていなかった感情を植え付けられて、泣きたい程の思いを知った。
日に日に強くなる思いは、自分の意思でどうにかできる範囲などとうの昔に越えてしまって、溢れる気持ちを周囲に悟られないよう必死なほどなのに。
「…いなくなればいいスよ。」
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