桐青★島準

□釘をさされたのは誰。
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「慎吾さん、聞きたい事があるんですけど。」

聞き覚えのあるその声は、愛しいあいつのものではなくて、その親友でありうちの4番バッターできっと時期キャプテンのもの。


「ん?何だ?」

「…準太のこと、なんですけど。」


言いにくそうに、だけどしっかりとオレを見据えて言葉を発したタケに、ああ、やっぱり、そう思った。

いつからだったろう。
タケの視線が、何か言いたげな色を帯びたのは。準太が自分から言い出すことは有り得ない。けど色恋に関しては、マウンド上のようなポーカーフェイスだとは言い難かったし、多分気付いているだろう、いつかは聞かれるだろう、そう思っていたオレの考えは間違いではなかったらしい。


「…ああ、何?」

「付き合ってるんですか?」

「…だったら?」


わざと素っ気なくかえすと、少しだけタケの表情が険しくなる。それでもタケは冷静さを失うことなく、オレに尋ねてきた。


「本気なんですか?」


タケが口にしたその言葉の裏側にあるのは、親友である準太への心配に外ならない。


「信用ねーなぁ。」

「すみません…でもオレは、心配です。準太のことが。」


…できることならオレの思い過ごしであって欲しかったです。

そうはっきり言い切ったタケに、思わず苦笑した。
まあ仕方ないよな。ましてや男同士、そして自分の親友だ。

準太と付き合うまでのオレの素行を知ってる奴ならきっとそう思うだろう。

だけど今、準太以外の誰かなんて考えられないし、誰かを代わりになんて出来ない。ましてや誰かがあいつの代わりになれるとも思ってねえし。

今の、オレの。
絶対で、そして唯一無二の存在。それが準太だ。


「…本気なんですね。」

「…本気で、好きだよ。大事にしたいと思ってる。」


さっきと同じタケからの問い。オレの真意をはかるように、強い視線で投げ掛けられるそれに、オレも素直な言葉でもって返事をする。

…ついでに大事過ぎて、汚すのが怖くて、キス以上何もしてねえよまだ。

そういうとタケは目を丸くして、ちょっとだけ顔を朱くして小さな声で、『誰もそこまで聞いてません』って呟いた。



じゃあ、オレはこれで、って立ち去ろうとするタケを、呼び止めた。

「あぁ、タケ。」

「何ですか?」

「今日お前がオレに確認しにきたのは、親友として準太が心配だから、だよな?」

「?そうですけど。」

「ん、ならいいんだ。いっていーぜ。」


何が言いたいんだって顔でタケは小首を傾げて、そのまま行ってしまう。
これが利央なら、また違った反応をしてみせただろうけど。





Fin.


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