西浦☆

□そして君と二度目の春
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去年は知り合ったばっかりで、おめでとうの言葉はおろか誕生日さえ知らなかった。

だけど今年は違う。


11月、オレの誕生日に花井がくれたバッティング用手袋と「好きだ」の一言。

そしてオレ達はゆっくり気持ちを育ててきた。

みんなには秘密の恋。





「花井くん今日誕生日だよね!オメデト!」


部活の終わったあと、しのーかの声に弾かれたようにみんなが花井にお祝いの言葉を贈る。

みんなに囲まれてはにかんだ笑顔の花井はカッコイイけどなんか可愛い。


「お祝いになんかおごってやるよ!水谷が!」


「なんでオレぇ〜!?」



阿部と水谷のやりとりに花井が嬉しそう。
そんな花井を見ているとオレも嬉しい。
口には出さないけど、みんなありがとう。





帰る方向は一緒で、一人ずつへって最後は花井と二人きりになる。


最後の分かれ道のかどで、いつも少しだけ二人で喋って帰る。




「花井、誕生日おめでとう。」


素っ気なくポン、と手渡したのは去年花井がオレにくれたのとお揃いのバッティング用手袋、そして花井の好きなスポーツメーカーのタオル。



「サンキュ、泉。」



喜んでくれた花井の笑顔につられてオレも笑顔になる。
普段言えない言葉でも、特別な日だから言える気がした。



「…花井、好きだよ。」



オレのその一言に花井の動きが止まる。
少し赤くなった頬。
花井の瞳が細くなって少し潤んだ。



「泉…キス、していい?」



オレは黙って瞳を閉じる。
ややあって躊躇いがちに触れてくる花井の唇。



そしてギュウッと抱きしめられる。



「泉…大好きだ。」


「…知ってる。」




…だからキス以上のことも、花井なら構わねえんだよ。



小さな声で腕の中で囁く。
花井の腕に、更に力がこもった気がした。


ハッピーバースデイ。
生まれてきてくれてありがとう。





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