桐青★島準
□だって本気の恋だからF
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…プルルルル
…プルルルル
…プルルルル…
『…もしもし。』
「…慎吾さん?オレです。」
『どうした?もしかして具合悪いのか?』
「…声。」
『…声??』
「声が、聞きたくて。」
携帯の向こう側で、慎吾さんが息をのむのがわかる。
無言になってしまった慎吾さんに構わずオレは続けた。
「オレ…どうしていいかわかんなくて…慎吾さんのことで頭いっぱいになんのが怖くて…慎吾さんのキモチに向き合うのが怖くて……だけど気付いたら慎吾さんのことばっかり考えてて…っ」
見ないふりをした。
気付かないふりをした。
日ごとに惹かれていくのを感じていたのに。
夢中になるのが怖かったから。
慎吾さんのことで頭も気持ちもいっぱいになっていくのが怖かったから。
だから自分の気持ちに気付かないふりをした。
もうこんなにも、慎吾さんのことしか考えられなくなっているのに。
「ずるい…こんなキモチにさせといてっ…別れよ……なんてっ…っ……オ、レ……しんご、さんの、ことっ……」
『ゴメン。待って、準太』
―――オレから言わせて?
伝えようとした言葉を、今まで聞いたことないような優しい声音で慎吾さんに遮られる。
『一週間楽しかった。この先もずっと一緒にいたい。準太が好きなんだ。あらためて…オレと付き合って』
至極穏やかな慎吾さんの声に、また涙がポタリとおちた。
「オレもっ…すき、です…っ。」
ふりしぼった言葉は掠れてしまったけど、電話の向こうで慎吾さんが小さな声でうれしい、ありがとうって言うのが聞こえた。
『準太、早く退院しろよ。会いたい』
「…オレも、です」
『明日、また病院、行くから』
「待ってます」
おやすみの言葉を交わし、パクンと携帯を閉じ、ベッドに潜り込んで頭まで布団を被る。寝付けなくて、慎吾さんの言葉を思い出す。
『この先もずっと一緒にいたい。準太が好きなんだ。』
さっきまでとはまた違う、ドキドキしたキモチ。
言葉にするとそれは確かなものに変わるんだと知る。
明日慎吾さんに会うの、恥ずかしいな。
だけど会いたい。
声が聞きたい。
明日慎吾さんに会ったら、もう一度好きだと伝えよう。
だって…本気の恋だから。
おわり。