桐青★島準

□だってお仕置きなんだから
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「…んな顔すんな。ちょっと妬いただけだ」


俯いた準太の頬に手を添えて顔をあげさせる。しかし表情はまだ曇ってしまったまんまだ。
今日は部活の後、慎吾の家に準太が来る予定だった。短時間でも、まったりと甘やかな時間を二人で過ごすつもりでいたのだ。
苛立ちを表に出したことを後悔しつつ、落ち込んでしまった恋人の髪の毛に指を絡めた。


「…仕方ないなー。…準太、キスして」
「………え?」
「準太からキスしてくれたら、許す。だからこっちおいで」



夜とはいえまだ学校の敷地内。
慎吾は準太の手を引いて、人目につかない木陰で足を止めた。


「ここなら誰にも見られないだろ。さ、どうぞ」
「慎吾さん…じゃ、目、閉じて下さい…」
「ダメ。これお仕置きだもん。準太も目、閉じんなよ?」


本当はもう怒ってないけれど。
これは罪悪感の消えない恋人の気持ちを軽くするためのきっかけ。


「ほら、仲直りのチュー」
「…わかりました」


躊躇いがちに触れてくる準太の唇。言われた通り目は閉じていないけれど、視線を合わせるのは恥ずかしいらしく首まで真っ赤に染まる。

唇を軽く開いて準太の舌を招き入れると、自分の舌を準太の舌に委ねた。


普段は慎吾に委ねることが多いけれど、今日は準太から積極的に絡めていく。
慎吾はしばしされるままに楽しんだ。







「…っん、は………。」


ゆっくりと準太の唇が離れる。
上気した頬は赤みを帯び、額はうっすら汗ばんでいる。


「途中、目ぇ閉じちゃったな」
「……すみません…」
「いーよ。もう怒ってねーし。苛ついて悪かった」


自分より幾分細い腰を抱き寄せ、チュッと音をたてて唇にキスをすると、準太が肩口に顔を埋めてくる。


「慎吾さん…」
「…ん?」
「こんなん言ったら慎吾さん怒るかもしんないスけど…オレ、ヤキモチ妬かれて、嬉しかったです」


不意にこんなこと言うなんて反則だろ…、そう思いながら口元が緩んでしまうのを感じながら、慎吾は腕の中の恋人をぎゅうっと抱きしめた。


「準太…今日泊まってけよ」
「………はい」










翌朝。


「準さんおはよっス…て、え!え!?」
「はよ。何だよ変な声出して」
「だってこれ!これってキスマークじゃないのぉ!?」
「はあ?………!!!!」


ロッカーの鏡で確認すると、首の斜め後ろ位の位置に赤紫の鬱血の痕。

普段慎吾は気遣って目立つ場所には痕を付けない。
ということは明らかにわざとそこに付けたと言うことだ。


振り返り慎吾を見るも慎吾は知らんぷり。

みんなの前で慎吾に文句を言うことは関係をばらしてしまうことになるから、怒ることもできない。

…そしてその矛先は。


「利央!お前しばらくオレに近寄んな!」
「ええ!?なんでえ!!?準さーん!!」



そんな二人の会話を聞きながら、慎吾は一人笑いを噛み殺し、本山は準太に絆創膏をさしだした。











Fin.

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