桐青★島準

□その不安は君だけのものじゃなく。
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「準太?」

「いなくなりたきゃいなくなればいいスよ。何処にでもいってしまえば。」


嘘。

こんなこと言いたいんじゃない。
そんなこと、これっぽっちも思ってない。

なのにオレの口からは、可愛いげのない言葉しかでてこない。


「野球部のことも、オレのことも、なにもかもほったらかして、いなくなりたきゃいなくな…」

「ごめん。」


むくっと慎吾さんが起き上がる。
慎吾さんの指がオレの頬に触れた。


「ごめん準太。そんな顔させるつもりじゃなかった。」

「そう思うなら……何で試すようなこと聞くんですか。」

「ん、ごめん。」


もうすぐ、夏。

負けたら貴方はオレを残して引退する。 
勝ったとしても、秋にはグラウンドでも、部室でも、貴方を見かけることはなくなる。
来年の今頃には、この屋上でさえ貴方の姿を見ることは叶わない。


「…慎吾さんの、ばか。」

「…ごめん。ね、準太、キスしよっか。」

「嫌です。」

「準太。」

「嫌です。慎吾さんなんか知らな……ンっ…」



噛み付くような強引な口づけ。

絡み付く慎吾さんの熱い舌が、呼吸もままならないほど奥まで深く入り込んでくる。

きつく抱きしめられながら、あぁ慎吾さんも、オレと同じように不安なんだと、何となく分かった。

そう思うと、尚更この人が愛しくて堪らなかった。



大好きです。
大好きです。
大好きです…慎吾さん。


先のことなんてわからない。

だから今は、
貴方の傍に居させて。





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