西浦☆
□幼なじみをこえる日。@
2ページ/2ページ
「腹減ったー!」
昼休みを告げるチャイムと共に、教室に田島の声が響き渡る。
飯食うのに机を寄せてると、ふいに浜田から声をかけられた。
「悪り、泉ちょっとつきあって」
連れてこられたのは、今は使われてないあき教室。
「何だよこんなとこ連れて来て」
「泉、田島とキスしたって…マジ?」
「あーもー、その話やめよーぜ。いい笑い者だ」
「マジ…なんだ」
「あんなのキスとかそんな内に入んねー……つ!?」
言い終わらないうちに、唇に生暖かいものが触れる。
それが浜田の唇だとわかるまで、数秒かかった。
「…っ何すんだよ!」
「ちょ、待てよ泉!」
「「うわっ」」
ドン、と浜田を突き飛ばして踵を返したその腕を引っ張られて、バランスを崩し浜田と共に倒れ込む。その拍子に強く背中を打ち、鈍い痛みが体に走った。
「痛って……んンっ!」
強引に覆いかぶさられ、再度浜田に唇を塞がれる。唇をこじ開けて浜田の舌が入ってくる。
「…っ………ふ……っ」
田島にされたみたいなのとは違う、強引なキス。
ガッチリ押さえられた両手首は、どんなに力を入れてもびくともしない。
「…っは……痛っ…!」
唇を介抱されるけど、首筋を強く吸われる。
膝で蹴ってみても、どんなに腕に力を入れても、浜田はびくともしない。
こんな浜田は、知らない。
オレの知ってる
幼なじみの浜田は、
バカばっかいって、
お調子者で、
お人よしで、
いつもヘラヘラ笑ってて。
こんな浜田は知らない。
こんな浜田は嫌だ。
こんな浜田は浜田じゃない。
「浜田、浜田…浜田っ……はまだぁ…っ」
やみくもに精一杯の声で浜田の名前を呼ぶ。
「…っ…泉…」
情けない顔の浜田がオレを見下ろしてる。
押さえられてる腕が僅かに緩む。
思いっきり浜田を突き飛ばして、教室から飛び出した。
足がガクガクして、何度も転びそうになる。
心臓がバクバクいって破裂しそうだ。
体が…震える。
気が付けば顔は涙でぐちゃぐちゃだった。
続く。