小話《パロ・転生部屋》

□だからきっとまた会える
2ページ/3ページ


「(はじめは、仕事を助けてくれればそれで良いと、
そう思っていたけど、なぁ)」


そう思いながら篁を真直ぐみた。
また涙がこぼれそうになったので、袖で乱暴に目をこする。

目が悪くなるぞだなんて篁が言うものだから、
だまりんしゃいと無理矢理に笑顔を作ってやった。


閻魔大王になってから涙脆くなってしまったように思う。
《聖徳太子》であった時は誰にも涙を見せずに生きていれたと思ったけれど。

そこまで考えて、あぁそういえば一度だけおお泣きしたことがあったと、エンマははにかんだ。

一度だけ、あのバカ芋がアホな事を言うものだから、うっかり縋りついて泣いてしまったんだっけ。

・・・まったくこの一族は、本当にタチが悪い。


「篁」

「何だ?」

「たくさん生きて、たくさん子を作れ」


篁が少し驚いた顔をして、長生きは意地でもしてやる。
と言ったのでエンマは笑いながら首を振った。


「それだけじゃ駄目だぞ、ちゃあんと子をたくさん作れ。
大きくなったら篁みたいに私の補佐にしてやる、絶対に。
一番お前似のおのこがいいな、気が強くて芋でアホな頑張り屋な子が」


そう言うと、篁がギュッと唇を噛んだ。

そして目を伏せて小さくため息をつく。


「本当に、我が儘な、奴だ」

「言ったら言っただけ、お前なら頑張ってくれるから、つい言っちゃうんだ」

「バカ」


篁が笑った。
エンマもつられて笑う。

ふと窓の向こう目を向けると、空が白んでいるのが見えた。

エンマが篁と名を呼んで、己の方に引き寄せてぎゅうと抱き付く。




「元気でな」


「お前もな」


「また会おう」


「・・・アホめ」









次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ