小話
□もどってきたあの人7題
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2.変わらないふたり
「なんだか妹子の家も久々だ」
そんなことを心底嬉しそうに言うもんだから、僕はうっかり泣きそうになった。
「変わらないなぁ」
「一年じゃあそんなに変わりませんよ」
一年、そう、一年前に太子は死んだ。いや、死んだと思っていた。
たったの一年、けれども僕にはとても長い長い一年だった。
太子の遺体を見ていなかった僕は、認めたくなくて、あきらめたくなくて、この一年間仕事以外の時間のほとんどを太子の捜索に使った。
どうしても言ってやりたいことがあったから、それはもう死に物狂いでありとあらゆる手段を使った。
結局本人から帰ってきたから骨折り損のくだびれもうけだったけれど。
「太子も変わりませんね」
「・・・、お前も、変わらないなぁ」
太子が笑う。
それにつられて僕も笑った。
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