小話《パロ・転生部屋》
□だからきっとまた会える
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「篁」
「はい」
「世話んなっちゃった、なぁ」
「・・・威厳のカケラもない挨拶だな」
篁が笑った。
こんな時くらい王らしくしてみたらどうだ、と言わてエンマは鼻をすすった。
「みっともない顔だ、しょうのない奴め」
そんなことを言いながら後から後から溢れてくる涙も拭かず、鼻水やらなんやらでグチャグチャになったエンマの顔を布で拭ってやる。
もがもがと何か言っているが、わざと聞き取れないように力一杯に拭いた。
拭き終えると、痛いじゃないかといつものようにエンマが怒ってみせたので、篁は緩く笑った。
これで、大丈夫だ。
「篁のアホ」
「それじゃあお前は大馬鹿者のアワビだな」
「ほんっとお前は口が減らないな、芋のくせに」
ぷぅと頬を膨らませてエンマは靴で床を蹴った。
もうすぐ夜があける。
今日の夜で、篁の務めは終わりだ。
秘書鬼はまだ見つかっていないけれど、篁がこれ以上冥府に通えば人でなくなる。
それはエンマが望んだ事ではなかったから、先日一方的に暇を出したのだ。
篁は初めは何か言いたげにしていたが、己の体の変化に気付いていたのか、
はたまたエンマの気持ちに気付いたのか、何も言わずに従った。
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