小話

□死んでください太子
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「太子」

「なんだ?」

「僕は結構あんたを殺したい」


さらさらと春のゆるやかな強い風が、頬を撫でた。

太子が足元のクローバー畑と化している地面から目を上げて、少し前にいる妹子をみた。
妹子は至って真面目な顔をしてじっとこちらを見つめている。


しばらく見つめあって、太子から視線を外した。

クローバーの郡に手を突っ込んで、また四つ葉を探し始める。


「殺してどうするつもりでおま」

「さぁ・・・とりあえず死んでくださいよ」

「お前、好きな子苛めたくなるタイプだろ」

「知りませんよそんなの。
それに誰が誰を好きなんですかバカですか」


太子はクローバー畑から顔を上げない。
妹子はやはり太子を見つめながら、手元の草をいじっていた。


「悪いが、まだ私死ねないぞ」


太子が顔を上げる。
瞳と瞳がかち合って、妹子はその強い瞳に目眩がした。

この瞳は毒だと思う。
この目で僕を始め、倭国の人間を支配しちまってるんじゃなかろうか。
そんなことを思った。


「あ、四つ葉」

「あ!?なんだよ!また妹子が見つけやがって〜!芋のくせに!」

「誰が芋だ!」


適当に弄んでいた草が四つ葉であったことに気付いて、妹子はそれをプチリと引き抜く。
そしてギャンギャンうるさい太子の髪にさしてやった。


「やっぱり、似合いませんね太子」

「そういうお前もその行動が恐ろしい程似合わないな」


そう言ってやると、妹子が顔を思いきりしかめて立ち上がった。

どうした?とわざとらしく聞くと、キッと睨まれる。
そして、仕事に戻ります!なんて言いながら、仕事場へとズンズン歩いていった。

太子は、そんな妹子を面白そうに眺めてから、ため息をつく。


するりと風が足元を駆け抜けて、太子はまた地面へと視線を落した。



「なんというか、馬鹿だなぁ」







妹子、私も結構、お前を殺したい。









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女性向きサイトなんだし、それっぽいの書いてみよう。
と初挑戦してみましたが、なんだか危ない感じになってしまいました。

危ない所を素で渡り合う飛鳥組が好きなんだろうか・・・。(ギャグ的な意味でも、シリアス的な意味でも。)




「本当に私達は、馬鹿だな。なぁ、妹子」




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