小話
□もどってきたあの人7題
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1.いるはずのないひと
まさか、と思った。
だって、だって太子は死んだはずだ。
僕らを置いて、勝手に死にやがったはずだ。
呆然としていると、太子は優しく笑って、ゆっくりと口を開いた。
「ただいまだイモ!」
「帰ってきて第一声がそれ!?なんですかその語尾!」
「いや、前考えた妹子の語尾だイモ!」
「言いませんよイモだなんて!」
ああ、ちくしょう太子だ。こんな馬鹿でアホなのは太子しかいやしない。
なんだよ。心配したんですからね、本当に心配したんだ。
「・・・太子」
「なんだ?」
「おかえりなさい」
そう言うと、太子は少し驚いた顔をして、それからただいま!といつものように笑いながら言った。
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