Novel
□幸せと平和
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「……ん。」
寝ぼけ眼で隣にあるはずの温もりを探る。もう癖になってしまった毎朝のこと。
11月初旬。窓辺にあるベッドは朝の寒さが一層増す。ただでさえ朝は苦手なのに。僕には地軸が傾く理由が理解出来ない。ずっと春でいいじゃないかと思う。
そんな小言を思いながら、足元から入った小さな隙間風が冷たくて、布団に余計にくるまった。
風の化身である僕でも冬の隙間風はどうにも好きになれない。
「…ん、みちる…。」
愛しい人の名前を呼んでも返事はなくて。みちるが僕よりも早起きなことは既にわかり切ったことなのに。
案の定、手に触れたのは冷たくなったシーツだった。
眠りから覚めてもしばらく瞑ったままだった瞼をやっと開けて、朝の光を確認する。
暖かそうな太陽の光。でも外は寒いよな、冬だしな、なんて思いながらまた眠りに就こうと瞼を閉じた、その時。
「はるか。」
意識が遠のく少し前に耳に届いた声。
「はるか?もう、まだ寝てるの?」
いつも通り起こされるのかと思いきや、もう一度布団に入り直したみちる。
(……そっか、今日休みだっけ。)
普段がお互いに忙しい僕とみちる。朝食と夕飯が一緒に取れればまだましなほう。極端なときは1日の会話は一言もなく、夜中に寝顔を見るのがやっと、なんてことも。
お互いに相手の夢を知っているから多少すれ違っても大丈夫だと、2人の間にある絆は感じていたけれど。それでも、一緒にいたいと思うのは仕方のないことで。そんな日常の中、いつの間にかどちらからともなく自然と休日を合わせるようになっていた。