Novel
□聖なる夜に
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「…。」
いつもの朝。
のはずなのに。隣にいるはずのはるかの姿は既になくて。枕元にある時計を見て、かなり寝坊をしてしまったことに気付く。
体を起こそうとして、酷い頭痛と特有のだるさに襲われて、風邪を引いてしまったことを自覚した。
ふらつく体を無理矢理起こしてリビングに向かおうとするけれど。
「っ…。」
一瞬の目眩がしてその場にしゃがみ込んでしまった。
──カチャ
目眩を抑えようとうずくまっていたところに、もう随分前に起きたであろうはるかの姿。
「みちる?」
普段の様子とは明らかに違う私を心配そうに覗き込むはるか。
「みちる?珍しく君が寝坊したから心配してたんだ。どうしたの?」
「少し目眩がしただけよ、何でもないわ。」
「目眩がするのに何でもないわけないだろ?顔色も悪いじゃないか。」
そう言われ、はるかに支えられてやっとのことで立ち上がる。その間もズキンズキンと頭が痛んだ。
「風邪だね。熱もあるみたいだ。」
私をベッドに戻し、額に手を添えながらそう言ったはるか。熱を持った私の額に、ひんやりとしたはるかの優しい手が心地よかった。
「連日のコンサートで疲れが出たんだろうね。今日はゆっくり休まなくちゃだめだよ。」
「っ…あ…。」
はるかに言われてから今日がクリスマスだと言うことに気付く。
「どうかした?」
「クリスマス、だったわね…。ごめんなさい。」
はるかのことだから、きっと素敵なクリスマスを用意してくれていたでしょうに。
「何言ってるんだ。そんなことより風邪を早く治すことのほうが先決だよ。」
毎年、この時期は必ずコンサートの予定が入ってしまう為に、はるかと2人切りでクリスマスを過ごすのは25日以降になってしまう。それは今年も例外ではなくて。昨日、やっと千秋楽が終わったばかりだった。