Novel

□聖なる夜に
1ページ/8ページ




「…。」


いつもの朝。


のはずなのに。隣にいるはずのはるかの姿は既になくて。枕元にある時計を見て、かなり寝坊をしてしまったことに気付く。


体を起こそうとして、酷い頭痛と特有のだるさに襲われて、風邪を引いてしまったことを自覚した。


ふらつく体を無理矢理起こしてリビングに向かおうとするけれど。


「っ…。」


一瞬の目眩がしてその場にしゃがみ込んでしまった。


──カチャ


目眩を抑えようとうずくまっていたところに、もう随分前に起きたであろうはるかの姿。


「みちる?」


普段の様子とは明らかに違う私を心配そうに覗き込むはるか。


「みちる?珍しく君が寝坊したから心配してたんだ。どうしたの?」

「少し目眩がしただけよ、何でもないわ。」

「目眩がするのに何でもないわけないだろ?顔色も悪いじゃないか。」


そう言われ、はるかに支えられてやっとのことで立ち上がる。その間もズキンズキンと頭が痛んだ。


「風邪だね。熱もあるみたいだ。」


私をベッドに戻し、額に手を添えながらそう言ったはるか。熱を持った私の額に、ひんやりとしたはるかの優しい手が心地よかった。


「連日のコンサートで疲れが出たんだろうね。今日はゆっくり休まなくちゃだめだよ。」

「っ…あ…。」


はるかに言われてから今日がクリスマスだと言うことに気付く。


「どうかした?」

「クリスマス、だったわね…。ごめんなさい。」


はるかのことだから、きっと素敵なクリスマスを用意してくれていたでしょうに。


「何言ってるんだ。そんなことより風邪を早く治すことのほうが先決だよ。」


毎年、この時期は必ずコンサートの予定が入ってしまう為に、はるかと2人切りでクリスマスを過ごすのは25日以降になってしまう。それは今年も例外ではなくて。昨日、やっと千秋楽が終わったばかりだった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ