Novel

□幸せと平和
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「みちる…?」


一昨日と昨日がその“極端な日”だった。2日間傍になかった大好きな温もりを、ようやく抱き締めた。


何よりも安心する、みちるの匂い。


「はるか…今朝は随分と甘えん坊さんなのね。」

「みちるの匂いって落ち着くんだ。」


決して香水を付けているわけではなくて。本当に、みちる自身のもの。

抱擁の戦士だからなのか、抱き締めているのは僕なのに、みちるに包まれているような優しい心地。


「まぁ、そうなの?なら簡単にシャンプーを変えるわけにはいかないわね。」

「え、シャンプーなの?これ。」

「多分そうだと思うわよ?さっきお風呂入ったばかりだもの。」


驚いてみちるの髪にうずめていた顔をあげた。心なしかみちるの髪がまだ濡れているのはわかっていたけれど。


「違うよ。みちるの匂いだよ。シャンプーとは別の。」

「そんな匂い、するかしら?」


自分でもわからない匂いに、不思議そうな顔をするみちる。可笑しくなってくすりと笑ってしまう。


「僕がこの世に生まれる前から知ってる匂いだよ。間違うはずないだろう?」

「匂いって記憶として一度脳に残るんですってよ。」

「へえ。じゃあそのせいかな、すごく落ち着くのは。」


確かに覚えてるみちるの匂い。いや、前世の記憶からならネプチューンのものか。


「それでなのね?」


突然、何かを思い出したみちるが笑顔と一緒にふふっと笑った。


今度は僕のほうが何のことかわからずに首を傾げる番になった。


「何のこと?」

「戦いのあとはるかは決まって私を抱き締めたでしょう?覚えていないかしら?」


………。


そういえば自分の変身も解かずにネプチューン姿をしたままのみちるを抱き締めたこともあった気がする。


「あぁ、そんなこともあったね。」


顔を見合わせて、小さく笑い声ひとつ。


今でこそ笑って話せるあの頃のこと。当時は笑う余裕なんて微塵もなかった。


死と隣り合わせの戦いの日々。立ち止まることも挫折することも許されなくて。ただ無心に戦ったあの頃。


そうしてようやく手に入れたこの平和。


「……君がいるならどこでも構わないけどね、僕は。」

「え?」

「なんでもないよ。折角の休日だから今日は1日中こうしてたいな。」

「もう、はるかったら!」


いずれまた戦いの渦に巻き込まれることになったとしても、君の隣にいるのは僕であるのはずだから。


これが束の間の平和だとしても、今だけは変わりない幸せを。




fin...♪*゚
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