Novel

□Bitter girls
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重たい足取りで入ったリビングでは、せつなが淹れた紅茶の香りが漂っていた。


「今度は何があったんですか?」


そう、少し呆れ気味に苦笑するせつな。はるかとみちるの喧嘩なんて嫌と言うほど目の当たりにして来たせつなにとって、今更動じる必要なんてさらさらなかった。喧嘩の原因の大半は、可愛い女の子を見付けると声を掛けずにはいられない、はるかの困った癖に対するみちるの怒りだったり、どちらかの単なる嫉妬だったり。おもしろ可笑しく書かれたゴシップ記事が原因だったりするのが大体なのだから。


はるかは、相変わらず止まない落胆のため息をついて、朝ご飯のパンを頬張るほたるの隣に腰掛けた。


「ママ、どこに行ったの?」

「今はパパにもわからないよ。ごめんな、ほたる。」


不安そうに眉を垂らす愛娘の頭を撫で、また、ため息。


「こんな時に申し訳ないですが、今コーヒー切れてるのでこれで我慢して下さいね。」


コト、と目の前に置かれたマグカップ。


前置きの謝罪を不思議に思って視線を移すと、カップにはみちるの好きな紅茶が湯気を立てていた。


「淹れないほうがよかったですか?」

「いや、気にしないで。ありがとうせつな。」


無理矢理笑って見せながら、せつなに気を遣って一口飲んだ紅茶に、情けなくも更に気分が沈んで行く。


本当なら、今頃向かい合い、笑合っていたはずなのに。どこで何を間違ってしまったのだろう。


「それで?何があったんです?」


自分のマグカップを持って座ったせつなが、もう一度静かに切り出した。
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