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□飼い主と猫
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「……ヤバ…道分かんねぇ…」
 
 
歩き続けて、気付いたら空は真っ暗。外灯もチカチカと付いてきた。
後先を考えずに行動してしまった事を今更後悔しても遅いな。
しかし、本当に道が分からない。自分がどうやってここに来たのかも思い出せない。
勘で歩いても当てにならないし、誰一人歩いていない。
軽い筈の買い物袋が重く感じてきた。
 
 
「うー……榛名ぁ…」
 
 
俺は歩く気力も無くなり、その場でしゃがみこんでしまった。
風が冷たい。寒い。手も冷えてきた。
やっぱり勝手に一人で買いに行ったのが悪かったのか?
そのままちゃんと家に帰ったら良かったのか?
俺…榛名の役に立ちたかったのに…これじゃあ榛名を余計困らせてる…!
 
涙が溢れそうな時、後ろから上着をかけられた。
見上げると榛名が立っていた。その時の顔は眉間に皺を寄せて、とても怖かった。
 
 
「はるな」
 
「……帰るぞ…」
 
 
榛名は買い物袋を持ち、俺を立ち上がらせて先に歩いて行く。
俺もその後に付いて行くが距離を開け、無言が続いた。
 
沈黙が苦しくなってきてしまい、とうとう涙が出てしまった。
 
 
「うっ……く…」
 
「じゅんた…?」
 
 
俺と榛名は立ち止まった。そして榛名は俺の方へと近付いて来た。 
 
「ご…めん、なさっ…」
 
「え?」
 
「おれ…が、もっと、ちゃんと帰って…たら、こんな事に」
 
 
途切れ途切れに言う俺を榛名は背中を擦ってくれた。
 
 
「榛名の、役に、立ち…たかっ…た、だけなん、だ」
 
「…」
 
「それなのに…っ俺は、榛名を困らせて…ばっかりで…!!」
 
「準太」
 
「ごめ…っ、ごめんなさい…!!」
 
「準太」
 
 
気が付くと俺は榛名に抱き締められていた。
そして帽子を取り、俺の猫耳に優しく口付けた。
 
 
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