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□ふたり
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「俺に早く会いたかったとか?」
 
 
俺は冗談混じりで言ってやった。だけどいつもならすぐに言い返して来る筈なのに、準太は一瞬固まって若干目を泳がせながら言い返した。そして段々声が小さくなって行き、顔を伏せた。
 
ポーカーフェイスと呼ばれている割りには顔に出やすい。と、言うよりも嘘を吐くのが下手なだけか。
俺は自分のマフラーを少し強引に準太の首に巻いてやった。
 
 
「…温かい」
 
「ヒヒ、会いに来てくれたお礼ー」
 
「だから違……はぁ」
 
 
準太はマフラーに顔を埋めた。俺は準太の頭を優しく撫でたが、鬱陶しそうに手で払い除けた。そして握っていたはずの手も、いつの間にか離されていた。
俺は、ほんの少し口を尖らせ、準太の顔を横目で見た。
 
 
一瞬だけ嬉しそうに頬を緩ませていた。
 
 
優しく微笑んでいて、でも何処か子供っぽい笑い方。俺はその笑顔に釘付けされた。
すると視線に気が付いたのか俺を睨みつけたが、今の俺には上目使いしているのと同じに見えてしまう。
これって自惚れてるって言うのか。
 
 
「準太ー」
 
「なんだよ」
 
「すっごいキスしたい」
 
 
準太の動きが見事に止まった。ああ、やっぱり駄目か。と半分諦めていた。
 
すると準太が頬にキスを落とし、素早く俺に離れた。準太も俺もお互い一気に顔が朱色に染まって、まともに顔が見れなかった。俺は、こんなに準太の事が好きなんだと改めて知った。
 
準太に気付かれないように、そっと手を絡めていった。
 
 
 
 

 
 
→後書き
 
 
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