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□3月14日
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「いってーな!何すんだよ!!」
「それはこっちのセリフだ!」
噛んだ方の指は、くっきりと歯形が残っていた。そして微妙に溶けたチョコも付いていた。
榛名が俺の口の中に入れたのはチョコだった。甘さが控え目な少し苦い味だった。
さっきまで口の中は同じ味ばかりでうんざりしていたので、このチョコがとても美味しく感じた。
俺は口の中で溶けていくチョコの味を堪能していた。
「美味しいだろ」
「え?」
「違う物食べると美味しく感じるだろ?」
俺はきょとんとしてしまった。榛名はそれを見計らって俺の口に入れたらしい。
榛名のくせに、俺の思った事が見透かされるなんて。つい笑みが溢れてしまう。
只の板チョコだけど、その味は特別に美味しく感じた3月14日。
終
→後書き
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