BRAVE STORY

□オーバーナイト・ラブ
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今日もいつもの通り、三谷亘は友人のカッちゃんこと小村克美君と学校へ登校し、いつもの通り授業を受けて、いつもの通り帰ろうとしただけなのに。
なのに…ど、どうしてこうなったんだ?







...オーバーナイト・ラブ...







僕の目の前には黒いセーターを着た人形─ではなく、僕が出逢った中でも間違いなく群を抜いている美少年、芦川美鶴が立っている。
しかもここは亘の家だ。
どうなってるんだ?
亘は必死に記憶を探った。




それはほんの数十分前のこと。
亘の家の近く、ちょうどいつもカッちゃんとサヨナラする曲がり角に差し掛かった時、
『お?あそこにいンの、芦川じゃね?』
うひょーっと、カッちゃんが珍しい生物でも見付けたかのような奇声を発した。
既に美少年な朋輩への友人以上の好意に気付いていた亘は、うぇっ?と素っ頓狂な声を上げてしまった。
出来れば関わり合いたくないのだ。
人の感情に悟い美鶴は、すぐに気付いてしまうだろうから。
だからその日も彼を避け─クラスは違うのだから、わざわざ避ける必要もないのだが─平凡に1日を終えようとしていたのに。
そんな亘の気持ちを知ってか知らずか、カッちゃんは、じゃあオレ家の手伝いあるからとかナントカ言って走って行ってしまった。
気まずい距離感を縮めるのも躊躇われて、亘はその場に立ち尽くしていた。
芦川の家って反対じゃなかったっけ、なんの用でこんなところにいるんだろう。
そんなことを考えてる間、周囲への注意を怠っていたようで、そのことに気が付いて我にかえった時には既に遅く、美鶴が目の前に立っていたので亘はうひゃっと女の子のような声を出しながら後退りしなくてはならなかった。
『ななな、なんだ、よ』
と明らかに動揺してますと言わんばかりの声で訊ねる。
あれ、そういえばコイツ、ランドセルを背負ってない。代わりに右手に小さな茶色い鞄を提げている。
『三谷』
ふいに美鶴が口を開いたので亘は視線をその整った顔へ戻した。
『なに?』
美鶴の口角が微々たるものながら上がるのを見て、コイツまた僕のことを馬鹿にしに来たのかな、なんて考えた。
しかし、美鶴の口から出たのは意外な言葉だった。
『お前ん家、泊めろ』
…はい?
もう一度お願いします、と亘は口を開きかけたが、美鶴がそれを遮る。
『泊めろって言ってるんだ。まさかこの距離に居て聞こえないなんて言わないよな?』
まぁ、どのみち断れないんだけどと言って、美鶴は口の中で何かを呟いた。
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