BRAVE STORY

□熱
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「ん…っ美鶴、だめ…もっとゆっくり…」
「…こう、か?」
「う…んん、そこ、い…っ」
「そんな声、出すなよ…」
気持ち良さげに熱い呼吸を繰り返す亘に注意しながらも、美鶴の亘を抑えつける手にも力が入る。
亘が美鶴を見詰め、この行為もクライマックスへ向かおうとしている─
と、そこで扉が開き、アヤが顔を出した。
「おにいちゃん、なにしてるのー?」
可愛らしく目を見開きながら問いかけるアヤに、美鶴は普段見せないような優しい笑顔を浮かべる。
「マッサージだよ」
扉を閉め、マッサージ?と聞き返しながら走ってくるアヤは、亘が居るからか少し嬉しそうだ。
「アヤもするーっ」
大好きなお兄ちゃん達のすることは何でも真似したいお年頃なのか、ベッドの前でぴょんぴょん跳ねながら腕捲りをしている。
美鶴は亘に許可をとると、アヤを抱えて亘の背中へ乗せてやった。
自分はベッドの端に座る。
「そうそう、アヤちゃん上手だねー」
一生懸命に先程見た美鶴の真似をして亘の背中を押すアヤに、心なしか嬉しそうな声を上げながら、亘はくすくすと笑った。
美鶴は面白くなさそうな顔をしながらも、楽しそうな妹と友人を黙って見守っていたが、ふと違和感を感じて目を細めた。
なんだ…?
モヤモヤする。
アヤが亘と仲良くしているからだろうか。
それとも─
別室から叔母がアヤを呼ぶ声がして、はあいと答えたアヤが亘の上から飛び降りた。
じゃあね亘おにいちゃん、と挨拶をして出て行くアヤを見送りながら美鶴は何故かほっとする。
「美鶴、どうかしたの?」
亘の方に視線を戻すと、怪訝そうに覗き込んでくるチョコレートブラウンの瞳。
不意にマッサージ中の亘の声が思い出されて、美鶴は頬が熱くなるのを感じる。
「亘、近い」
気恥ずかしさを隠すためにそう言ったのだが、事実亘が起き上がってきていたので二人の距離は先程よりも近くなっている。
「いーじゃん」
もっと近付いちゃうもんね、と言いながら見ているこっちが恥ずかしくなるような表情をしてから、亘はぐいと美鶴の口唇に自分の口唇を押し付けた。
「馬鹿…どうなっても知らないからな」
そう言って亘を引き寄せて口付けながら美鶴は、亘を家に泊める言い訳を探し始めた。






end.
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