BRAVE STORY

□ほんとの気持ち
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僕はきっと、芦川のこと好きにはならない。
話し掛けても、返事は「そう」とか「うん」とか素っ気ないし、何より僕に優しくないし。
でもふとした拍子に気になった。
芦川はどんな人を好きになるのかな…。
多分…ううん、間違いなく、それは僕じゃない。

「もうすぐ夏だね」
「うん」
僕らが出会ってから初めての夏が来る。
隣を見ると、初夏の風が芦川の蜂蜜色の髪を揺らしてて…少し…眩しかった。

昨日いつものように別れて家に入ると、誰も居ない空間がなんだか寂しくて。
彼の後を追いかけたくなったなぁ…。
「芦川はどんな人を好きになるのかな…」
考え始めて口に出してみたら切なくなってきた。

もうすぐ二人が出会って初めての夏。
「暑いね」
「うん」
もしかして、夏が過ぎてもまだ芦川はこんななのかな。
全然目も合わせてくれない彼の隣を、苦笑しながらそっと歩いてる…。

神社の前を通りかかった時、二人の思い出がやけに色鮮やかに蘇って気付いた。
きっと彼は違うんだ。
他の人とは、違うんだね。

優しくなくても…それで僕、構わない。
芦川の傍にずっと居たい。
ずっと見つめていたい。
今更気付いた想いだけど、気付いてしまうと初めからそうだったみたいに心に馴染んで、心地好い鼓動を鳴らす。
この気持ち…早く伝えたい。
目の前に居る僕を見て。
僕いつもこんなだけど…。
そのままの芦川をこうして好きになったんだよ。

「もうすぐ二人に初めての夏がやって来るんだね」
「ずっとそこに居ろよ…」
顔を真っ赤にしながら芦川が呟く。
僕は微笑みながら、その隣を歩いてる。





end.
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