BRAVE STORY
□After the rain
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ばか。ばかばか。
美鶴の…
「バカァーーーーーーーー!!!!!!!!!」
*...After the rain...*
「なぁーに叫んでんだよ、亘ぅ」
「三谷、皆びっくりしてるよ」
俯いた僕にふたつの声が降ってくる。
当然ながら待ち望んだみっつめの声は聞こえないわけで。
「昇降口のド真ん中で突っ立ってるのは邪魔になるね。せめて端に寄ろう。ほら小村、手伝って」
「お、おう」
「いい。もう帰る」
ムキになってそう答えた。
ずぶ濡れで僕が帰ったって、美鶴はなーんにも気にしない。
6月。梅雨。
毎日土砂降りの雨に見舞われながら、中学生の僕たちは過ごしていたけれど。
(ひとりで私立行っちゃうなんて…)
ずっと一緒だと思っていた蜂蜜色が離れてゆく瞬間を思い出す。
2ヶ月間、こちらからは一切連絡していない。
あちらからのメールも電話も無視だ。
「ざまぁみろっ」
僕を置いて行くからだと、その言葉は飲み込むことにする。
さすがに公共の場で昼ドラのようなドロドロとしたセリフを吐くわけにはいかない。
「帰るって…三谷、傘は?」
「持ってない。宮原、送ってってよ」
ささやかな反抗の気持ちを込めて言うと、案外あっさりとわかったと宮原が了承したので僕は少し眉根を寄せてから傘に潜り込んだ。
心配そうな顔でカッちゃんが見守る中、手でも繋ぐ?と宮原が微笑む。
僕は繋がないよと少し照れると、再び俯いた。
「おい」
ああ、久しぶり。
こんなに心地良い音は他にあったっけ…。
「え、なんで?」
間抜けな声が出た。
だってそこにはずぶ濡れの美鶴。
「宮原っ!このメールは…っ」
水滴を拭おうともせず携帯を前に突き出したまま宮原に突っかかる。
宮原はにこにこしている。
な、なんだぁ?
「ダメだったかな?」
「当たり前だ!」
いつも余裕かましてる美鶴が珍しい…。
ぼんやりしていた僕は手を掴まれたことにも気付けず。
引っ張られてようやく慌てた。
「帰るぞ」
不機嫌な蜂蜜色が前を歩いている。
まだ置いてったことを許したわけじゃないけど、その背中に呼びかける。
雨は上がっていた。
「ね、また迎えに来てね」
end.