彼岸花
□濡れる。
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ぴちゃん、ぴちゃん。
刀から鮮血が滴り落ちる。
赤の中心には教官が立っている。
「教官……お怪我は?」
「あぁ、大丈夫だ」
刀についた血を振り落とし、鞘に収める。
返り血や自身の血でべっとりと濡れた服を気持ち悪そうに一瞥し、こっちを振り返る。
服の心臓の辺りには、銃で撃ち抜かれた穴が空いている。
「ふふ、『化け物』か……」
「……教官」
「ん?」
俺よりも頭一つ分くらい低い教官の頭を撫でる。
その黒い髪も血で濡れていたが気にしない。
ゆっくり、ゆっくり。
俺の今の気持ちが伝わるようにと。
「……どうした、大石。怖かったのか?」
「えっ、いや、そんなことは」
「ふふふ、ありがとうな」
そう笑って、教官が俺の頭を撫でてくれた。
「さて、帰るぞ」
「はい」
さっきの俺の気持ちが教官に伝わったことを祈りながら、教官の後ろを歩く。
濡れる。