彼岸花
□歩む。
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ぴちゃん、ぴちゃん。
刀から滴る赤。
そしてその中心に立つ教官。
今までに何度も目にした光景だった。
「流石やね、教官」
「ふふ、そうでもないさ」
怪我をしている訳でもないのに崩れ去りそうだ、と思う。
「怪我は無かと?」
「ん?私が怪我をすると思っているのか、千歳」
「一応心配しよっとたい」
「それはどうも」
話しかけると飄々としている、けれど隠しきれないのだろう寂しさや悲しさなどの暗い感情。
それは教官の特殊さ故なのだろうけど。
これまで生きてきて、どれだけのものをその胸の内に秘めているのだろうか。
「私なんかよりも、お前は怪我していないのか?」
「あー、おいは大丈夫ばってん……」
「そうか」
「そろそろ戻らんばっちゃなかとね?」
「そうだな、戻ろう」
先を歩き出す教官。
ふう、とため息を溢し、その後ろを着いていく。
きっとこれからも、隣を歩けることはないのだろう。
歩む。