彼岸花

□割る。
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「夏だー!海だー!いやっふぅぅう!!」


サンサンと照る太陽。
キラキラと輝く海。
ビキニ姿ではしゃぐ教官。

あぁもう何て格好してるんだ!
白くて細くて、でも引き締まった身体が……って俺は何を見ているんだ!


「……と、いうわけで!」

「どういう訳だ……」

「スイカ割りをしよう!」


教官の目の前には、いつの間にか敷かれたシートの上にスイカが一つ。
目隠し用の布と割るための棒まで準備万端だった。


「俺はそこで見てる」

「ふむ。では千歳から一人ずつ行ってみようか」

「楽しかごたんね」


千歳に目隠しして棒を持たせ、ぐるんぐるん回す教官。
うわぁ、目が回りそう。


「右、もっと右!」

「そのまま、真っ直ぐだ!」


教官、真っ直ぐ行ったら海ですよ……。
そんな誘導のせいで、千歳が振り下ろした棒は砂を叩いた。


「難しかね……」

「よし、次!」


手招きされて、教官の元へ。
千歳と同じように目隠しし、ぐるんぐるん回される。
全然方向が分からない。

何とか棒を振り下ろしたものの、やはり砂を叩くだけだった。


「残念だったな」

「やっぱり難しいですね」


苦笑いを返すが、教官は満面の笑みだった。
凄く楽しそうだ。


「次教官の番ばい!」

「任せろ!」


自分で目隠しをし、さあ回せ、と言う教官と回す千歳。
これでもかと回した後、教官はフラフラと歩き出す。


「フン、どうせ割れねぇよ」


パラソルの下で跡部が悪態付く。
いつの間にか手にドリンクまで持っていた。


「左!左側ばい!」

「……」


教官は千歳の誘導を聞いているのかいないのか、スイカの前でぴたりと立ち止まった。


「はっ!」


掛け声と同時に棒を振り下ろす。
そして棒はスイカにクリーンヒット、どころかクリティカルヒットだったようで、粉々になったスイカが四方に飛び散り――


「ぶっ!」


パラソルの下で寛いでいた跡部に当たった。


「……」

「……」

「……ど、ドヤァ」


目隠しを外して辺りを見回し、微妙などや顔で言う教官。


「てんめぇ!!何しやがる!!」

「何って……スイカ割りをしていたんだよ、見ていたろう?」

「スイカ砕きになってんじゃねえか!!」


喧嘩を始めた二人を横目に、スイカは俺と千歳で美味しくいただきました。



割る。




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