彼岸花

□投げる。
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「……という訳で!」

「どういう訳だ……」

「雪合戦するぞ!」


外は一面の銀世界。
夜の間に降った雪は、一面を白に染めていた。


「まあ、雪かきのついでだよ、ついで」

「雪合戦じゃ雪かきにならんっちゃなかとね……」

「文句は言わないっ!」

「へぶっ!!」


千歳の方をチラリとも見ずに、教官が千歳の顔面に雪玉を当てる。


「なんば……すっとね!!」

「ははは、当ててみろ!」


ひらりひらりと雪玉を避ける教官に、千歳は雪玉を作っては投げ作っては投げている。


「おら、てめえもやるぞ!」

「え?あ、あぁ!」


気がつくと隣では跡部が壁を作っていた。
その影で雪玉をストックしておく。


「こんなもんだろ……投げるぞ!」


跡部の声と同時に、教官に向かい雪玉を投げる。
投げる。
投げる!
とにかく投げる!


「ちょっ、ちょっと待て、待てって!」

「俺にも、俺にも当たいよるばい!」

「構うか!」

「構え!」


二人にばすばす当たって砕ける雪玉。
二人とも雪まみれだ……。


「こうなれば……千歳」

「……一時休戦、ばいね」


くるり。
向かい合っていた教官と千歳がこちらを向く。


「くらえぇえええ!」

「行くばい!」

「チッ、来るぞ、大石!」

「あぁ、わかってる!」


さっと壁に隠れる。
今のうちに雪玉を作っておかないと……。


そう考え、足元の雪をすくい、ギュッと握ったとき、

ガシャン。


「……ガシャン?」


ドドドドドド!

金属音がした後、ものすごい勢いで雪玉が叩きつけられていく。


「わああ、うわぁ!」


そして壁が崩れる。
その向こうに見たものは


「……てめえら、それは卑怯だろうが!」

「問答無用!」


バズーカとマシンガン(雪玉用に改造済み)を持った教官と千歳の姿だった。

勝敗は言うまでもない。




投げる。






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