dream
□熱帯魚の恋心
1ページ/3ページ
いつでも慈しみに溢れる深緑の瞳。
私を見つめるそれは優しく。
私の心を締め付けるのです。
「……それじゃ、行ってくるな」
トントン、と水槽に餌を落とし、彼は私を見てそう言った。
餌を食べることもせずに彼を見つめる。
綺麗な深緑の目は、私を引き寄せて離さないのだ。
部屋を出て行った彼の姿が見えなくなると、水槽に沈んできた餌を口にした。
あぁ、一言でいいから伝えたい。
「好きだ」と。
「ありがとう」。
それだけを伝えられたら、私はもう、死んだって未練はない。
だけど私は魚で、彼は人。
分かり合うことなど、ましてや言葉で伝えることすらできないのだ。
コツン、と水槽にぶつかる。
外に、出たい。
私は、ただそれだけを祈りながら彼の帰りを待った。
その時、ふわり、と光に包まれた気がした。