dream

□昼下がり
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「思ってたよりも混んでたなぁ」


昼となってしまった道を歩く。

通院のため、学校に遅れてしまったのだ。
怪我をしているのが足のせいで、走ることも出来ない。

仕方なくのんびりと歩く。

今日はいい天気だ。
上を見ながら歩いていると、体――主に足首に衝撃が走った。


「ぎゃっ」

「ん?」


人にぶつかってしまったと気付いたのは、しりもちをついて相手を見上げたときだった。


「大丈夫ね?」

「あ、うん、大丈夫。ごめんね千歳くん」

「別に良かよ。はい」

「あ、ありがとう」


千歳くんが差し出してくれた手を取って立ち上がる。
その時、ズキリと足首が痛んだ。


「痛っ……!」

「何ね、怪我したと?」


歪んだ私の顔を見て、千歳くんが心配そうな表情になる。


「あぁ、違うの。元々怪我してて、それで今日病院に……あれ?」

「ん?どげんしたと?」

「千歳くん、何でここにいるの?学校は?」

「……まあ、あればい。ちょっと散歩しよったとよ」

「……サボりって言えばいいのに」

「細かいことは気にしちゃいかんばい」


ほれ、と言いながら、私に背中を向けてしゃがむ千歳くん。


「えっ、何?」

「足、痛かとやろ?乗らんね」

「いいいや、いいよ!私、重いし!」

「鍛えとっとやけん、どうってことなかよ」

「えー……本当にいいの?大丈夫?」

「テニス部ばなめたらいかんばい」


遠慮がちに千歳くんの背に乗ると、千歳くんは軽々と立ち上がる。


「うわぁ……!」


私よりも20cmも30cmも高い千歳くんの目線は、いつも私が見ている風景とはまるで違って見えた。


「凄いね、千歳くん」

「何が?」


千歳くんは、何を言ってるのかわからない、という表情で、ちらりとこちらを振り向いた。


「いつもこんな景色を見てたんだねー!」

「……そんなに珍しかと?」

「うん!」


ふうん、と一度うなって、千歳くんは前を向く。


「そいやったら、また背負ってやるよ」

「えっ?」

「約束ばい」



にっこり笑う千歳くんに、その提案を断ろうという気持ちは私の中にはなくなった。



END

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