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□クリスマスフリー
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「寒いねー」
「ねー」

いもちゃんを保育園に迎えに行ったその帰り道。
吐く息も白くなるほどの寒さに震え、いもちゃんの右手を握った。
(ああ、なんて暖かいんだろう)
(子供体温……あ、俺も子供か)

「おにいちゃん」
「なぁに?いもちゃん」
「ぼくはいい子かなぁ」
「そんなのあたりまえじゃん!俺、いもちゃん以上のいい子知らないよ!」
「そっか〜えへへ!」

可愛い〜!なにこの子天使!?
来年のハロウィンはフワフワの天使の羽のついたワンピース作って着せたいっ
仏教徒とか、その辺は、置いといて。ね。うん。

若干(いやかなり)思考がずれたところに、いもちゃんは大変な言葉を投下してきた。

「じゃあ、サンタさん、ぼくのところにきてくれるかなぁ」

…サンタ?さんた?参太?男か!?って違う違う。
ええと、あ、サンタクロースね
…サンタクロース!?
あああ来週クリスマスじゃん!
いもちゃんは保育園でサンタクロースの絵本を読んだらしく、その感想やら期待やらを興奮気味に話してくれた。
うはーまずいなー

「やっぱり、来ないのかなぁ」
「まさか!絶対来るよ!」

しまったぁああ言っちゃったー!
正直な話、今月の残りの生活費じゃプレゼント買って上げられないよ!
小野の家からの仕送りは最低限しか手をつけないと決めてるので、こういうイベント事のためのお金は用意していない。(勿論いもちゃんの誕生日は質素でも盛大に祝ってるよ!)



この日からバイト三昧の日々となった。

もっとも、平日の昼間は学校があるし、夕方はいもちゃんを迎えに行く必要がある。
…いもちゃんの迎えは篁に任せた。嫌だけど!不本意だったけど!そして夕方から夜までのバイトの間、小野の家に預かってもらった。
休日は昼から夕方にかけてバイトを入れて、夜にはクタクタになってすぐに寝てしまう生活が続いた。










そして
 当日。













いもちゃんが好きだと言っていたアニメのぬいぐるみ(特大!)と新しい耳あて、それからお菓子の詰め合わせを用意して(お兄ちゃんこれが限界だったよ)サンタ役を頼んである友人に預けておいた。

テーブルには、小さな手作りケーキといつもより豪華な食事が並ぶ。
うん、短期間にしては随分豪勢に出来たんじゃないだろうか。
俺は満足げに頷いて、いもちゃんの様子を伺った。
さぞかし喜んで、……あれ?

「いもちゃん…?」
「…ふ…ふぇ…」
「いもちゃんどうしたの!?泣いて、え、わ…!おなか痛いの!?」
「ち、がう、のっ」
「え?あ、すぐにサンタさん来るからね!」
「…いらない」
「え」
「サンタさんからのプレゼントいらないっ」

ええっ
まさかのここ数日の俺の頑張り全否定…。いや、いもちゃんはそんなことしらないはずだから、俺自身を否定されたわけじゃない、はずだ!と、自分に言い聞かせる(じゃないと泣いてしまいそうだ)。

「プレゼントよりっおにいちゃんと、一緒にいたいもん!」
「いもちゃ…」
「ぼくはおにいちゃんがいればそれでいいの!だから、いっぱいあそんでくれるおにいちゃんが、」
「いもちゃあああああん!!」


(ああこの子はなんて可愛いんだろう!)





その日は、外で待たせていたサンタ役の友人のことなどすっかり忘れ、いもちゃんと二人きりで聖夜を楽しく過ごした。










*















「ニャンコさん…俺はもう帰ってもいいだろうか」
「…帰るぞ。もう寒くてたまらん」





































「…ってことがあってね〜」
「へぇ、ちっちゃい妹子さん、可愛いですね」
「でしょう!」
「もうぅ〜兄さんてば鬼男さんに何話してんですか!」

「クリスマスなんて、いついもちゃんが『今年は恋人と過ごすので』なんて言い始めるかヒヤヒヤする時期だよ〜」
「「あ」」
「え?」
「「……」」
「ちょ、なんでふたりして目を合わせて顔赤くしてるの!?ねぇ!」








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とーた様宅のクリスマスフリーいただきました!!
鬼妹!鬼妹!!

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