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□よいこにおくりもの
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ピンポーン
不意にベルが鳴った
アパートの一人暮らしに人が訪ねて来るなんて滅多にない。それに今日はクリスマスイブだ、こんな日に人が訪ねて来るなんて、少し期待してしまう
このボロアパートにはインターホンなんて高性能な物なんてなくて、なおかつ覗き穴もない。ドアを開けるその時まで客人がどんな人なのか分からないのだ
(誰だろ?)
「はいはい今開けま…す」
期待と希望を持ちながらドアを開ける…とそこいたのは
「あ、小野さん?大家の和美ですけど」
「あ、はい」
大家さんだった。
結構大家さんの用件は年末年始は管理が出来ない、と言う事の連絡だった。回覧板とかで回して伝えて欲しい…。
大家さんは去り際『このアパートで1人過ごしてるの君だけよ』と皮肉な台詞を吐いて言った。ちくしょー!家族がいるからって…
(……まぁ、ひがんだって仕方ないか)
聖なる夜だろうがその前日だろうが関係ない。ただの一日だ。学校もあった、バイトもあった、それで晩ご飯食べて、風呂に入って寝るだけ
(何を期待してんだ僕は)
本当に望んでいる人は、ここには来ない。今頃正しいイブの過ごし方でもしてるんだろう
取り敢えずお腹がすいた。せめてもの気持ちでおかずはコンビニで買っておいた唐揚げにしよう。
ピンポーン
「………はぁ…」
あぁ、もぅ!
少しイライラしながら、ドアへ向かう。このアパートには高性能な物も来客を確かめる物もないもないが、ドアの向こう側に居る人なら分かる。大家さんだ。あの人忘れっぽいからな…
前聞いた話だと、すごい大事な日にアンテナ取り付けてたとか、パン屋行ってたとか…
ってそんなことはどうでもよくて、どしどしと音をたて豪快にドアを開ける
「めり、おわっ!」
「なんで……す、か…」
余りにも僕が勢い良くドアを開けすぎたため、ドアの向こうに居た人物は驚いて、すっころんだ。
「………」
「何するか!このアホ芋」
「……たい、し?」
「人がせっかくメリークルシマスって言おうと思ってたのに…」
いや、それを言うならクリスマスだし、今日は前日だし…ってそんな事じゃなくて!
「太子!なんでここにいるんですか!」
「ん、何でって…良い子にしてた妹子にプレゼント渡しに」
「アンタ彼女と約束あるんじゃ!?」
「ん〜?」
愕然と驚き立ち尽くす僕の横を「お邪魔しまーす」と無断でスルリと入り、太子は僕に背中を向けた状態でサラリと発した。
「別れた。今日」
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