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□飛鳥
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なんてことない、いつも通りのこと
目の前で筆を持ち仕事をしている妹子を見つめながら『好きだ、愛してる』なんて言っていた
本当に、いつも通り
そしたら妹子は急に筆を止め何か言いたげな目を向け、少し唇を開けた
「―・・・・・」
が、結構何を言うでもなくまた筆を進めた
「妹子?」
さっきのなんだ?と言うニュアンスで尋ねてみたが「何もないですよ」と言う用に無視して視線を机に向け仕事をし続ける妹子
そんな風にされてはしつこく聞けない。
「・・・・」
「・・・・」
筆が紙の上で動くさらさら、という音だけが部屋に静かに響く
お互い無言。何もすることがない私はイスに座りながらボーっとしていた
「・・・太子、」
さっきの事を忘れかけて、意識が違う所いた頃に妹子が顔をあげ声を掛けてきた
仕事に一段落付いたのだろう、筆をコトンと置いた
「さっきの、ですけどね?」
「うん?」
「・・・・あ〜・・」
また何か言いたげに眉をよせ怪訝な表情をし、口を開いたが、頭をかいて「やっぱいいです」と言って筆を持ち始めた
「なんだよーはっきりしないか芋!
言いたいことがあるなら言うでおま!」
(気になるじゃ、ないか)
妹子はまた怪訝な顔をしていたが、観念したようにため息をついてから私の目を見た
「僕も、ですよ」
そうとだけいうと、視線をまた机の上の書類にやり、筆をとり、さらさらと文字を書いていく
文字が先ほどより多少おぼつかない
(僕、も?)
何が『僕も、』なのだろうか?
ゆっくりと妹子の言った言葉の意味を考える
(・・・あぁ!)
意味がわかりパッと妹子に目をやると、筆はまだおぼつかない字を生み出していて、
その筆を持つ人間の耳はほのかに赤くて、
(可愛い奴め)
凄く嬉しかった
これが精一杯
(僕も、好きです、愛してます)
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デレ芋!デレ芋!
ほのぼのしたような
甘いようなカッコいい文章を目指したつもりです
081115