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□右祭り2
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プレゼントは別れてから想いを引きずる事のないよう消耗品がいい。
君はそう言って、いつだってくれるのは食べ物ばっか。今僕の口に放り込まれたのだって君から一番最近貰ったキャンディー。
僕が、
食べ物だって残そうと思えば残せるよ?と言えば君は、
腐る、とか、微生物が食べる、だとかあとなんか難しい事を並べて返してた。


「ねぇ、もしかして最初から別れる事が前提だった?」


キャンディーを舌で転がしながら答えを待っても受話器の向こう側は全くの無音。


「曽良のばーか」
『こどもですか?』


もう電話を聞いてさえいないのかと思ってつぶやけば、返信は返って来た。

なんだ、聞こえてるんじゃないか…








「曽良のばか」
『…妹子さん』


ため息まじりに名前を呼ばれるとまるでいつものじゃれあいのような錯覚に陥る。でも、違う。それぐらい分かってる。


「曽良のばか」
『…何回言うんです?』
「ばか曽良」
『切りますよ?』
「………好きだ…」
『…………』


言葉を返してはくれなかった。
だけど今、何かをためらっていた気がする。
君が何か言いかけた気がしたのは僕の願望?

こんな会話に不釣り合いな甘い甘いキャンディーの味が口に広がる。喉が渇く味だ。


『もう夜も遅いですし、用件もすんだので切りますね』
「…………用件をいやに直球で投げてくるよね、君は」
『そう言う性格なので』


別れます。と一方的な電話がかかって来た数分前、それから数分後、理由も上手く聞けないままの今。淡々とし過ぎる君のせいか、1度も涙も出ないんだ。


『本当に切りますよ』
「………うん、わかった」


これ以上電話してても無駄だって、感じた。
彼は別れたくて、僕がすがった所で届かないって分かったから。


「じゃあまたね曽良、おやすみなさい」
『…さようなら』


曽良は言い終るとすぐ電話を切った。彼らしいと笑いたかった。でも笑えなかった。







「さよならかー……」


『またね』なんて僕はまたを期待していたのかもしれない。
曽良の『さようなら』は深く突き刺さって、本当のさようならなのだと今更実感した。


「ははは……」


頬を濡らしながらも渇いた喉で笑ってみた。
最後に貰ったキャンディーを噛み砕いたらペースト状の更に甘いのが出て来た。


「あー甘っ…」


馬鹿みたいに甘いんだよ馬鹿!
って伝えたいけど、かけ直すことなんてできやしない。


朝まで泣きたいぐらいなんだけど、この部屋にはもう彼から貰ったものなんて残ってなくて、今食べ終ったキャンディーだけが終った恋の余韻を響かせていた。





ラストコール

(彼も泣いてる事を僕は知らない)



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君から彼に変わる辺りは心境の変化です

曽良君も別れたくて別れたんじゃねーぜ!て言う話













090428
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