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□右祭り2
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付き合ってくれ
と言われた。男に。
良いですよ
と応えた。その男に。

煩わしくもなく、落ち着く人だったから、了承した、はず。でももしかしたら僕も最初から好きだったのかもしれない。

恋愛なんて、煩わしくてした事もなくて、怖く感じた。
多分相手が相手だったから恐れていたのだろう、別れる事を。もし別れてしまった時に思い出に潰されてしまいそうで、だから何も思い出を残したく無かった。


「別れます」
『…………はぁ?』


電話の向こう側の人の表情が手に取るように分かる。今すごく間抜けな顔をしているだろう。
こんな言葉、言われた方が僕なら、反応も返せないぐらいショックを受けるだろう。彼はまだ冗談だと思っているのだろうか。






僕の両親代わりとなる人達が薦めた女性は、彼と同じように煩わしくなく、彼と同じような茶色の髪をしていて、綺麗という容姿だ。嫌いではない。むしろ分類としては好きな方に入る。多分。
血が繋がらずとも長年僕を育ててくれた2人には感謝している。『死ぬまでに孫が見たい』と言う彼らの期待を裏切る事などしたくない。

けど、僕は彼女を彼以上愛すことはないだろう。








『ねぇ、もしかして最初から別れる事が前提だった?』


彼にこんな真実を告げたくなくてあやふやに話をしていれば彼が尋ねた。
そう言うわけでは無かったが、最初から別れが不安で臆病な姿勢で居続けた辺り、そうなのかもしれない。
返事を返しあぐねていると軽く非難されるのが聞こえた。


「こどもですか?」


そう言えばまた返ってくる。


『曽良のばか』
「…妹子さん」


いつものたわむれのようで、違って苦しい。


『曽良のばか』
「…何回言うんです?」
『ばか曽良』
「切りますよ?」


切る気なんてない。本当は1秒でも長く話していたい。


『………好きだ…』
「…………」


僕も、好きです。
伝えようと口を開いた。でもそれでは意味がない。
彼にあんな理由話すくらいなら、彼に最悪な奴だと思われても良い。その意思がぐらりと揺らいだが、音はこぼれる事なく口は閉じられた。





「もう夜も遅いですし、用件もすんだので切りますね」
『…………用件をいやに直球で投げてくるよね、君は』
「そう言う性格なので」


別れます。と一方的な電話をかけて数分前、それから数分後、理由をはぐらかしながら電話を終わらせようとする今。1度も泣かない貴方のおかげか、涙は出ていない。


「本当に切りますよ」
『………うん、わかった』


未練を断ち切りたかった、出来ることなんてできなそうだけれど。


『じゃあまたね曽良、おやすみなさい』
「…さようなら」


言い終わってすぐ電話を切る。
泣いてしまったから。

貴方はまたと、僕にまたと言ってくれた。
本当はさようならなんて、いらない、そう伝えたい。
携帯を握りかけ直せばいいのに。それだけでいいのに、出来ない。


「妹子さんっ………」


いつもとかわらぬ殺風景な部屋に響いた貴方の名前。







ラストコール

(僕は貴方が泣いているのを知っている)


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曽妹は悲恋にしたk(ry
彼から貴方に変わるのは心境の変化です(もういいって?)

対にするの好きです











090428
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