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□右祭り2
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机を挟んだ向かい側。
そんなに大きくない机、少し立ち上がり、手を伸ばせば届く距離。
とても近い距離。
だけど遠い。


俺の手が参考書をチェックする先生の頭に届いたとしても、その心にまで届く事はない。


「…入鹿くん…」


苦笑いで先生が俺にプリントを返す。間違いばかりで真っ赤なプリントに俺も思わず苦笑いになる。


「なんか、惜しいんだよね」


全部凡ミスなんだよなー、と言われてプリントをよくよく見ると、順序ミスや、くだらない間違いばかり…
受験も間近だって言うのにこんなんばっかりな自分が嫌になる。


「はぁ〜」
「ため息は幸せが逃げるんだよ」
「俺の幸せはもう逃げてます」
「もぅ〜ほら、そんなしょげないで、英単語の一つでも覚えよ?」

(英単語、ね)


先生から渡された単語復習プリントを受け取りながら心の中でため息を吐く。
英単語や、数式なんかより、俺は先生の事が知りたい

(って、口に出せればなぁ)

長いことずっと家庭教師をして貰ってるのに、先生の事知ってようで全然知らない。
家族構成やフルネーム、どこの学校だとか。そんなんばっかわかってて、
恋人いんの?とか気になる人いんの?とか好きなタイプは?とか、大事な事ばっかり聞けなくて知らないんだ。





進まない単語復習プリントに飽き飽きして、先程のプリントに目をやる。
赤いチェックの中白紙のままの自由英作文が嫌に目に付く。テーマは『夢』だそうだ。
英作文なんてめんどくさいから書かなかったけど…

(夢…)








「俺は貴方を想い続けたい」
「え?」
「…………………………………………て、英語でなんて言うんですか?」
「あ、あぁ英語ね」


えーと、と言いながら文法を調べる先生を視界に入れながら、俺は自分のヘタ男加減を呪った。









ヘタレの遠吠え
(情けなずぎて泣きそうだ)


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new携帯に慣れないまま書いたため出来がorz
ヘタレ×鈍感









090505
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