クレヨンの扉

□11話.九月は競い合う花々の祭典!?
1ページ/10ページ

 

〜10より〜





ふわん、ふわんと漂ってきた匂い。
それは金木犀の香りだった。



街の顔役、ガウェイン氏のブースだ。



金木犀で囲った真ん中に、凝った造りの青銅ベンチがおいてあり、
その後ろに一本の銀木犀が花を湛えていた。



ベンチに一人の紳士が腰掛けている。



年の頃なら、老年に差し掛かったという処だろう。


がっしりとした身体に白いものの交じり始めた赤い髪。



「やあ、ガウェイン。盛況ですね」



紳士の顔に穏やかな笑みが浮かぶ。
改めて手中の渋い樫の木のステッキを握り直し、彼は成果を見上げた。


青い美しい空を、金木犀が縁取っている。



いつまでもここに居たい。



そう思わせる程、美しい光景だった。



「楽しんでいらっしゃいますか?
ヤン先生。そしてユキさん」


あたしは大きく頷いた。金木犀も大好きだったからだ。


「はい!この匂いが大好きなんです。
お花をハンカチに少し貰ってもいいですか?
学校の、行き帰りの道にもよく咲いていて、そこでもあたし――――」



 
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ