クレヨンの扉
□1話.五月は出会いの季節
1ページ/15ページ
あたしは散歩道、一本の黄緑色のクレヨンを拾った。
それが、あたしとヤン先生との出会いの始まり。
「てれらりら、れん〜♪」
キテレツな歌を歌いながら、
あたしはいつもの如く、手にしたクレヨンで
アスファルトの地面に簡単な長四角を描いた。
丸い把手をつければー?
「出来上がりィ〜」
上機嫌で、あたしは掴めない筈のソレを持ち上げる。
持ち上げると、地面が扉の形に抜けた。
「そーれ〜♪」
あたしは迷いもせずに、
その中に飛び込む。
ぽよよよよょん。
実にマヌケな音を立てて、
白いトランポリンが跳ねる。
まるで、この緑の大草原の中に咲いた花みたい。
「めしべ?」
あたしは自分を指差して、笑った。
ここはいつもいい風が吹いている。初夏の風、薫風だ。
「…相変わらず、呑気なヒトですよね、ユキは」
幼い声に下を覗き込むと、少年がデッカイ紙飛行機を折っている処だった。
「うっス!トール」
あたしはぶらん、
と逆さに実ったまま、挨拶をした。