クレヨンの扉
□2話.5月は出会いの季節
1ページ/11ページ
〜1より〜
小さいが(やや)恰幅の良い彼女がやると、迫力満点である。
「ヤン、明日何があるのか忘れたのか?」
そう言うと、彼女は傍でお座りしていたマロ君に縋って立ち上がった。
「明日…というと、ああッ!!――――セシルの結婚式ですかッ!?」
ポン、と先生は手を打った。
「そうだ。
そこで泣いているチャーリーの姉さんのだ。
知ってるとは思うが、
結婚式の後は町中をパレードで練り歩くな?
その時、町の壁が落書きだらけだったら、どうする?」
あたしは最後まで聞かずに、
ゆうかさんからマロ君の手綱を受け取った。
「ゆうかさん、お借りします。
先生、行くよッ!!」
先生は一つ頷くと、
気絶しているトールをそのままに素早くあたしを抱き上げ、大猫に跨がった。
ゆうかさんはひらひらと、手を振っている。
その逆の手に、まだ握っていたらしい牛乳をパックから直接飲んでいた。
あたし達を乗せて駆け出す、マロ君の後ろでの会話が耳に届く。