クレヨンの扉
□3話.六月は湯煙桃源郷で!
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雨が降り続くのは、この世界でも変わらないようだった。
この掌のクレヨンはすこぅし、色を変えた。
今月に入って何故か、それは綺麗な水色になっていた。
ヤン先生の居心地の良い家の中から外を見ていたら、
しててん、とた、とてん。
ぴったん、ぽて、ぽぽたん。
雨粒が不思議な音を立てている。
「ユキ、抹茶入り玄米茶が入りましたよ。
‥おや?甘ガエルですね」
先生の声にあたしは首を傾げて軒下を見た。
すると、緑色の小さなカエルが庭の紫陽花の花に座っていた。
その数、9匹。
「せんせ、アマガエル、じゃないの?」
あたしがそう言うと、いつもの褪めた蒼いジャケットを着た先生は、
傍でみたらし団子を取り分けていた助手のトール少年を振り返った。
「いいえ、『甘ガエル』なんですよ。
トール、杏仁豆腐はまだありましたっけ?」
スミレ色の瞳が思い出す様に宙を彷徨い、頷いた。
「まだ少し、氷室に在りましたよ」