クレヨンの扉
□4話.六月は湯煙桃源郷で!
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〜3より〜
清風、と呼ばれた青年は流れる様な美しく長い水色の髪をしていて、真白い紐で軽くそれを括っている。
顔立ちは優しく穏やかで、やはり瞳は湖面の様に澄んだ水色だった。
大層な美貌だが、それが少々浮世離れしている。
「ああ。二年振りの《慈雨祭》なのでね。
供を二人程連れて、逗留しているのだよ」
「もうそんな時期でしたか。
それでよく、チケットが手に入ったものだな‥」
ヤン先生の考え込んだ呟きに、
聞き慣れた女の人の声が重なった。
「清風がわざわざ都合してくれたんだよ。
お礼、言っとけば?ヤン」
奥から出て来たその女性はゆうかさんだった。
旅館の浴衣を着て、
くつろいでいる様だ。
「そうだったんですか‥清風、お手数を掛けました。
何も言わないから驚きましたよ。」
「その方が楽しめただろ?――――ユキもさ」
天パの髪の毛をアップにしたゆうかさんがウインクを寄越した。
あたしは嬉しくなって駆け出すと、熟女に抱きついた。