クレヨンの扉
□7話.七月は竜宮、時の彼方へ
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竜宮は朱塗りの大御殿だった。
海中都市は上から見ると、まるでリトル京都。
美しいそれに驚いていると、白鳥はツプン、とそこを覆う膜に入り込んだ。
空気はねっとりと湿度が高いくらいの感じでちゃんと、息が出来る。
でも、それは飴のお蔭で、宙をお魚が群れを成して通行しているのを見ると、やはりここは海の中らしかった。
大鳥居を潜ると、美しい輿が用意されていて、点滅するクラゲがそれを支えていた。
「ヤン、ゆうか。――――久しいのう」
黒髪をゆるりと結った切れ長の、瞳が美しい女性が、その中から優雅に降り立った。
「約定通り、一両日お世話になります」
「乙姫、どれくらいぶりかな?」
二人をそれぞれ見やり、頷いた彼女はあたしにふと目を留めた。
「おや、この子が『例の』?』
乙姫は優しげな目をすがめてあたしの向こうを透かし見た。
そうとしか言い様の無い視線だった。
「……大変じゃの」
「乙姫」
「分かっておる」