クレヨンの扉
□9話.八月は空を駆けて!
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夏休みも残り少なくなった今、皆どうしてる?
あたしは相変わらず、ヤン先生んチに入り浸っているんだけど。
「トールぅ。本当にごめんねぇ?もう、赦してよー」
「………………」
何だかんだ言いつつも、
きちんとお茶の用意をしてくれる美少年は、機嫌悪そうにしている。
それもその筈、先月あたし達は揃って竜宮城にお呼ばれしたのだが、
誤って時の迷宮に迷い込んだあたしは、まあ、その、ちょっとしたショックを受けてね。
危うく彼を忘れて置いて帰るトコだったのだ。
今日は冷たいヨモギのハーブティー。
爽やかな香気が残暑に疲れた身体に優しい。
お茶受けは、夏蜜柑のシロップ漬を乗せたレアチーズケーキ。
木の香りが森の中を思わせるヤン先生のお家。
風鈴がチリン、チリンと音を立て、
離れた山からの冷たい空気を運んでくれる。
直通なんだって。
「やれやれ、男がいつまでも女の子に腹を立てて。
にっこり笑って、水に流す程度の事が出来ない様ではまだまだ半人前ですね」