Novel(黒猫)

□花束
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一人の少女と一匹の黒猫が話していました。

「ヨイショッ…ヨッ…ト…、ふぅ〜。やっぱりこんな小さくてか弱い私にはこんな重くて大きいのを運ぶには無理が少々あったみたいね。あ!こんにちは、私は黒ネコ。あなた、今日お引越なんですって?かわいそうに。友達とお別れはしたの?…そう。みんな泣いてたでしょ?泣いてなかった?あなた嫌われてるの?あ〜、イジメられてたわけ…。まあ、新しい学校で頑張りなさい。と、いうことで、ハイ、これ。引越祝いの花束。イイ香りでしょ?ちゃんと花瓶に生けてあげてね。あとね、これあげる。お花が元気になるエキスなんだけどね。このお花買った時に貰ったの。毎日、朝2滴入れてあげてね。えっ?何で泣いてるのって?そりゃあなたが引越ちゃうんでしょ?もう会えないじゃない。だったら泣くのは当たり前よ。あらら、あなたまで泣いちゃって。ハイ、ハンカチ。鼻はかまないでね。あ〜、もうかんじゃったか。じゃあ返さなくていいわ。あげる。あら、お父さんがよんでるんじゃない?外に車来てるし。じゃあ、どっか行っても元気にするのよ。じゃあ〜ね〜♪」

イイ香り。少女が貰ったのは真っ赤な椿に造花のフドウが入った花束。少女はとても喜んでいます。少女はその日の夜、車で引っ越しました。
少女の手にはあの花束ががっしりと握られています。
新しい家に着きました。たくさんのダンボールの中から真っ先に花瓶を探します。
花瓶がありました。花瓶に水をたくさんいれます。それからあの黒ネコに貰った液体の入った瓶を2回振り、花瓶の中に2滴入れました。
液体はピンク色で水に垂らした途端フワッと広がり水に馴染みました。
初めて貰った花束。
少女はしばらく花を見つめています。

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