その他

□まいにちおすし
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此処は豊島区池袋。昼間だというのに人が多い空間をぼんやりと歩くのは門田京平だ。

仕事の打ち合わせの為に新宿へ出向いていたが、思ったより早く終わったのでいつもの本屋にでも行こうと足を進めていた。


「オイシーヨ。寿司食ベル。オ腹一杯。良イコトヅクシネ」

『寿司おいしーよー。露西亜の職人さんが握ってるよー。見た目入りづらいけど寿司うまいよー』

「…随分と気の抜けた呼び込みだな…」


暫く歩いていると大きい黒人男性が目に入った。よく見知った顔だ。

そしてその隣にいる少女も、門田は良く知っていた。

ひらひらとチラシをうちわ代わりにして客を呼び込んでいる少女に門田は呆れながらもその足で少女に近づいた。


『あ、門田さん。こんにちは。どうですか、寿司』

「昨日食ったわ」

『ですよねー!!!いつもありがとうございます。』

「オー門田良く来タ。寿司食ベテ行くとイイネー」

「だから、俺昨日食っただろ」

「毎日飽きナイ。問題ナイネ」

『いやー、流石に毎日は飽きるっしょ!!!』

「桜わかってナイ。寿司、毎日食ウものネ」

『まぁ、私寿司嫌いだし』


寿司屋で働いている奴の言う事とは思えないなと思いながら、門田は桜に突っ込みを入れた。


「じゃあなんでここで働いてるんだよ…」

『それはちょっと海より深い事情がありまして!!!』

「…そうか。お前らしいな」

『えへへ、これ褒められてんのかな?』


照れくさそうに頬を掻いてはいるが、きっとロクな理由じゃない。もう、コイツと関わると溜息しか出てこない。
本日何度目かの溜息を吐いて、門田は眉間を抑えた。


「褒めてねぇよ」

『ぬぁ!?』

「ったく…」

『そういえば、今日は渡草さんやゆまっちや絵理ちゃんは?』

「毎日一緒に居る訳ねーだろ。仕事の帰りだ」

『あ、門田さんってお仕事してたんですね!!!』

「…帰る」

『あぁ!!!うそうそ!!!帰らないで!!!』


踵を返した門田にしがみ付いた桜は大きな腹の音をさせて気まずそうに苦し紛れのウィンクをした。


『…あはっ!!』

「はぁ…ったく…休憩いつだよ」

『え?』

「寿司、連れてってやてもいいぜ」

『えーと、オムライスが食べたいです』

「奢ってもらう分際で我儘言うな」

『うはっ。すいません。サイモン!!!私休憩するから抜けるね!!!』

「門田寿司食ウ?」

『ま、たまには連続で寿司ってのも悪くねぇだろ』

「門田イイ男ネー。中入って桜待つとイイヨ」

「…そーするわ」


サイモンの良い笑顔に見送られながら、門田は桜の後を追ってゆっくりとした足取りで暖簾をくぐった。






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