海よりも深く
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「さっき別にいいって言ったの神威じゃない…」
「さっきと今は別〜」
「フンッ」
あーあ…
団長が何したかは知らないが、大方予想がつくぞォー…
「私、神威が大会で優勝してもキスしないから」
プイッと顔を背けた夏海。
ピクッ
あ、いま団長の眉毛が動いた。
「そんなに拒否するんだったら俺が優勝して意地でも夏海にキスしてもらうから」
彼は開眼して私に向けてそう言った。
本当のところを言うと、私は神威に優勝してほしいと思っている。
「………」
やっぱり…素直になっとけばよかったかな……
小さい頃はもっと素直だったんだろうなぁ…
なんで覚えてないんだろう…
バタンッ!
神威はドアを勢いよく閉めて阿伏兎さんの部屋を出て行った。
「…ねぇ、阿伏兎さん」
「んー?」
「私、本当は神威に優勝してほしいの…」
「そうか…」
それはああいう意味でとっていいのか…?
「さっき神威に、私のキスはどうでもいい的なことを言われて…。それで少しムカついちゃって、つまんない意地張っちゃった…」
ポフッ
夏海が俺に抱きついてきた。
「どうしよう…阿伏兎さん…。神威…きっと怒ってるよね?」
ギュッ…
「…大丈夫だろ、団長なら」
「そうかな…?」
「あぁ」
ニコッ
「……阿伏兎さんのこと、義父(とう)さんって呼んでもいい?」
「義父さん…か。別にいいぞ」
「ありがとう、義父さん」