短編小説
□早咲きの桜(マリア様がみてる)
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この春、新しく三年生となる紅薔薇(ロサ・キネンシス)こと福沢祐巳は、新入生の入学式の準備の後、薔薇の館でひと休みついていた。
「まったく、黄薔薇組はともかくとしても、白薔薇姉妹まで抜けてしまっては準備もはかどりませんわ、お姉さま?」
そう言いながら温かい紅茶を差し出したのは、新二年生となる紅薔薇の蕾(ロサ・キネンシス・アン・ブートゥン)の松平瞳子だ。
「まぁ、しょうがないよ。今日は桜がきれいだもん」
「は?それが何の関係があるんです?」
瞳子はさっぱりわけがわからない、という顔をした。
「つまり、まぁ、お花見デートってことね」
「デート!?乃梨子ってば何にも言わないで…」
瞳子は不満気な表情を顔いっぱいにたたえた。そういうところは、確かにお姉さま似とも言えるだろう。
「ねぇ、私たちもする?お花見デート」
「な。何のんきなこと言ってるんですか…っ////まったく、もう」
ふふふ、と祐巳は笑う。そして、ちょうど去年の今頃を思い出す。あのときはいつもと違う志摩子さんにあたふたしたんだっけ。……
* * *