短編集
□3. 最後の笑み
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樹海の森の奥深く、誰も入って来られない秘密の場所。
木漏れ日の差し掛かるあたたかな場所。
―私たちの、出逢った場所―
そこに、大きな大樹にもたれ掛かっている二つの影があった。
それらは、人の形をしていた。
ただ、片方の背中には、人には決して無いものが生えていた。
それらのうち、人間の少年のような姿をした方が背に翼のある少女の姿をした方に話しかけた。
「ティア、まだ帰らなくても平気なのか?」
幼さの残る少年の声に、ティアと呼ばれたものが答える。
「もうちょっとだけ…」
ティアはそう言って少年に甘えるようにすりよった。
少年はその行為に少し頬をそめながら、少女の髪の毛をすくようにして撫でる。
束の間、あたたかな沈黙が場を支配した。
「ねぇ、ずっと…ずぅっと先も一緒に居てくれる?」
最初に沈黙を破ったのは、少女の方だった。
「・・・・・」
少年は、少女の唐突な質問に応えられずにいた。