TEXTT2

□名前
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「ふあぁー…。眠…。」
俺はいつも通り、学校の屋上に来た。
「風が気持ちいいな〜。すぐに眠れそうだ…。」
と、その時、フェンスから校庭裏が見えて―――
「あれって…。」
ツンツン頭で猫背の男を見つけた。
「志々尾。」
名前を呼んでみた。
気づかない。
「志々尾ー。」
気づかない。
「しーしーおー。」
少し大きな声で呼んでみた。
全く気づかない。
いくら耳が良いって言っても、屋上から小さい声で呼んでも聞こえないか。
俺はフェンスに背中を向け、寄りかかった。
「…限。」
どうせ聞こえないだろうと思って、下の名前を言ってみた。
もちろん、今までよりも小さな声で。
そしたら、

―カシャン

「何だ?」
びっくりして振り返ると、フェンスの上に…志々尾がいた。
あれ、さっきまで下にいて、名前呼んでも気づかなくて…あれ?
混乱している頭を落ち着かせる。
「あ…えっと、さっきまで下にいたよな?来るの早くね?てかドアの音聞こえなかったんだけど。」
「あぁ、跳んできた。」
おっと、いけない。
また、わからなくなった。
跳んできた?…下から…ってことは―――
「で、何だ?良守。」
「だめ、つか、聞こえ、あ?」
「落ち着け。お前が俺を呼んだんだろ、良守?」
話をそらされたことより、志々尾が俺の名前を呼んだことが気になって…。
「……えっと…。よ、呼んだだけ!」
だんだん顔が赤くなって、恥ずかしくなって…気がついたら、屋上から出て行ってた。
―――あーぁ、夜どんな顔してアイツに会えばいいんだよ!
そう思いつつも、俺は名前を呼んでくれた嬉しさに微笑みながら、階段を駈け降りていった。
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