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□遺書。
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目を閉じると、あの時のことが昨日のように思える。
そして、お前の残した言葉が何度も蘇る。
「お願い、もしも−」
ホルンの村はずれにある丘に、一人たたずむ者がいた。
「あれから、もう一年…か。」
エルクだった。
「今日は風が強い…。」
髪とバンダナとポンチョが、風によってなびく。
もう夕暮れが近付いている所為か、空は赤紫色のきれいなグラデーションを描いている。
「悪いな、もっと早く来るつもりだったんだ。
そうむくれるなよ。」
エルクは静かに呟き、その場に腰を下ろした。
思い返せば、それは突然の事だった。
大災害にて、世界は多大な犠牲を払ったが、
生き残った人たちで力を合わせ、復興をした。
町は活気を戻しつつあり、生活が安定していた矢先だった。
リーザが倒れた。
最初は、ただの過労かと思った。
病に倒れても、持ち前の明るさは相変わらずで
またすぐに元気な姿を見せてくれると思っていた。
あの笑顔が当たり前のものだと思っていた、当時の自分が憎い。
「覚えているか?
まだ旅を続けていた時、
ヤゴス島で俺の過去を話した時も、空はこんな色をしていたよな。」
エルクはそう言い、空を仰ぐ。
その言葉に答えるかの様に、風が先ほどよりも少し強く吹いた。
草が、舞う。